スキューバダイバー深海

海の底に眠る鉱物

地上の鉱物は枯渇が目に見えている。

​もう海の底を引きはがすしか選択肢はないのだろうか?

深海とは

「深海」には明確な定義は存在しない。しかし、一般的には水深200m以上の海域を指すとされている。水深200m以上では光合成に必要な太陽光が届くことはないため、それより深度の浅い「表層」とは大きく異なった生態系を育んでいる。さらに水質も表層と大きく異なるため、表層と深海の水はほとんど混合することはなく、ほぼ独立した水循環系が作られている。

深海はさらに中深層と呼ばれる水深200~1000mの水層と漸深層と呼ばれる水深1000~3000の水域、深海層と呼ばれる3000~6000mの水層、そして超深海層と呼ばれる水深6000m以上の水層に区分される。地球の表面積の約半分は水深4000~6000mの地帯に属し、これより深い箇所は主に海溝に代表される部分であり、地球表面の2%にも満たない。

海洋生物のほとんどは植物性プランクトンも多い表層に生息しているが、メカジキ、コウイカなどしばしば食卓で見かける魚介類も一部は中深層に生息している。

 

漸深層には太陽光がほとんど届かず、アンコウなど私たちが「深海魚」と親しんでいる特異な姿かたちをした魚介類はここより深い水層で多く見られる。特に深海層からはまったく太陽光が届かない水層になるので、透明で目を持たない生物が多くなる。イカやナマコの仲間、そしてウミグモなどの節足動物が主な生息者である。

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海床のほとんどは砂で覆われているが一部に岩盤で覆われていたり、後述の「団塊」と呼ばれる岩が砂の上に点在していたりする。そして大きく分けて三種類の鉱物資源採掘に適した鉱床がある。

多金属団塊 Polymetallic Nodule

水深4000~6000mの一部の海床にはジャガイモ程度の大きさの金属を多く含んだ塊が海床に半埋没状態で分布している。この金属塊はマンガンを多く含んでいるがそれ以外に銅、ニッケル、コバルト、そしてレアアースもわずかに含んでおり、マンガン団塊あるいは多金属団塊と呼ばれる。

玄武岩、石灰石や海床に沈んだサメの歯などの核となる物質が中心には存在し、そこから年輪を重ねていくように成長して塊を成すようになる。成長速度は100万年で1mm程度と言われており、海洋鉱物資源の中でも再生には極めて長い時間を要するのが特徴である。

 

もっとも多くの資源量が確認されているのはハワイ南方沖のクラリオン・クリッパートン断裂帯周辺の公海域である。

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コバルトリッチクラスト

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コバルトリッチクラストは海床に点在する海山の頂上から斜面を覆う5~20cm程度の薄い岩石の層である。多金属団塊と比較してコバルトを多く含む(含有率約1%かそれ以上)のが特徴である。以前は水深1000~2500m程度の深さに存在するとされていたが、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査で水深5500mの海底からも存在が確認されている。

やはり多金属団塊と同様に成長には長い時間を要すると見られており、多くの条件が整わなければならない。鉱源となる熱水活動が盛んで、かつ安定した岩盤で作られた海山があり、上層からの沈積も少なく、さらに酸素を多く含む海水が循環し、鉱物を酸化させやすい環境が整っている必要があると見られているが、具体的な成因は解明できていない。

多金属硫化物

多金属硫化物は地下深部でマグマなどに熱せられた有用元素を含む「熱水」が噴出し、冷却されることによって銅、亜鉛、金などの金属とその硫化物を含む多金属体として堆積したものを指し、海底熱水鉱床とも呼ばれる。熱水が吹き上がる周囲に堆積していくことから「チムニー」と呼ばれる煙突状に堆積する。

周囲は硫化水素の濃度が非常に高いために多くの生物にとっては有毒である。逆に高濃度の硫化水素の中で生息できる生物が群生した特異な生態系をはぐくむ。

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深海採掘で行われること

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これら深海鉱床にて採掘を行なうには特殊な重機と船舶が必要になる。技術的に比較的容易だとされているのは多金属団塊を回収するものである。発表されているもので商業採掘に最も近いモデルとされているものの一つはDEMEグループの開発した「Patania II」と呼ばれるものである。これは海底に存在する塊を回収するための吸引機が取り付けられた機材で、吸引された団塊をさらに粉砕し、海水と混ぜたスラリーへと加工することでポンプを取り付けた上昇管で海面に待機している作業船へと送る一連の作業を海底で行なうものである。これら作業を高水圧環境で行なうために重機は開発者であるGlobal Sea Mineral Resources社資料に基づけば試作品の1/4モデルでも幅4m、長さ12m、高さ4mの大きさになっていた。

なお、海面に待機している作業船では有用金属を多く含む部分と無用土砂が多い部分へとスラリーを選鉱し、不要部分は排水管で海中に投棄することになる。ただし、この排水管の設計については十分に詳細な公開資料がそろっていなく、これまでの発表資料の図式等に基づくならば、海底付近で投棄されるのではなく、水深200mほどの中深層で投棄されることも危惧されている。実際にこのような排水処理が行われるのであれば採掘行為による環境影響は海底にとどまらず中深層以下の海層にも及ぶと危惧されている。

コバルトリッチクラストや多金属硫化物を含む熱水鉱床における採掘行為も基本的な工程は同様である。海底で有用金属を含む部分を回収・粉砕し、スラリーに加工することで待機船にポンプで送り、選鉱した不要部分を投棄する手順で行われる。ただし、多金属団塊のように容易に吸引できる状態では海底に存在しないために、コバルトリッチクラストや多金属硫化物の場合はまず岩盤カッターを取り付けた重機で岩石を切除し、切除されたものを回収・粉砕・送管する手順になる。そのために重機は岩盤を露出するための補助カッター、岩盤を切除する大規模カッター、そして切除された岩盤を回収・粉砕・送管する回収機の三種類で工程を分担する重機が設計・開発されている。