
海よりも深い欲望
深海資源開発は海に何をもたらすのか?

海を犠牲にしないために
深海での鉱物資源開発は取り返しのつかない生態系破壊をもたらすかもしれない
現在、最も有望とされる深海鉱床の一つであるクラリオン・クリッパートン断裂帯はジンベエザメやオサガメなどの絶滅危惧種の回遊ルートと重なっています。ほかにもキハダマグロ、メバチマグロなど商業価値の高い魚種にも影響をもたらすことが危惧されています。

なんのために?
気候危機対策に海を破壊しなければならないのだろうか?
低炭素技術のカギはバッテリ
「低炭素技術」と呼ばれるものはいくつもあるが、代表的なものは再生可能エネルギーによる発電と電気自動車(EV)。そのどちらにも共通するのが電力をためておく技術―バッテリである。
そのためには多くの鉱物が必要となる。


鉱物採掘のフロンティアは深海へ
深海にはコバルトリッチ・クラスト、多金属団塊、海底熱水鉱床など場所や深さ、地形によって多様な鉱物が存在することが確認されている。
いずれも特異な環境を作り出しているために深海生物のゆりかごであるとされているが、深海生態系の調査はまだまだ始まったばかりである。
失われた生態系は戻らない
コバルトリッチ・クラストや多金属団塊は年輪を重ねていくように少しずつ海水中の金属を固着させていくことで作られている。その成長スピードは100万年に1mm程度と言われている。団塊がなければ生存が困難な生物にとって、深海採掘は絶滅を余儀なくさせることになるかもしれない。


今そこにある危機
国連は何の規制もつくらずに公海での深海採掘を許可してしまうかもしれない
公海における深海採掘は国際海底機構(ISA)の管轄にあたり、採掘を行うにはISAとの契約が必要になります。現在、日本を含む多くの国が探査契約をISAと交わしており、深海での商業採掘を虎視眈々と狙っています。
一方でISAは深海で採掘を行なうにあたってのルールを定めるための協議を継続しています。ところが、2023年までにルールが何も合意されなければ、ルールなきまま深海での商業採掘が始まってしまうことが危惧されています。
早期の採掘をもくろむ企業は都合のいいルールを作るために国際会議を牛耳ろうとしています。